天文

2015年6月10日 (水)

中世占星術師になれる? はじめてのアストロラーベ

きょう6月10日は「時の記念日」。
中世の美しい天文器具アストロラーベを使って、日の出・日の入りの時間を求める方法を解説します。
(※なお、これを身につけたからと言って、現代日本では特に有用性のない技術です。山や海で遭難してしまい携帯品はアストロラーベだけ……といった特異な状況であれば、ひょっとして役立つかもしれません)
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アストロラーベ(Astrolabe)とは?

10世紀頃アラビアで発明され、中世~近世にかけてイスラーム圏や欧州の天文学者、占星術師者が用いた天体観測機器。(詳細はこちらの参考サイトへ)
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アストロラーベ(レプリカ)を入手する

本物の骨董品となると大変高価で入手困難ですが、アストロラーベのレプリカならば比較的安価に(数千~数万円程度)求めることができます。私が持っている紙製レプリカはこちら:

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スペインAntiquus社 天文ポストカード・シリーズ
国内では、イタリア古典文具店のGiovanniジョヴァンニ(吉祥寺/池袋店)などで取扱いあり

アラビア語、ペルシャ語など様々な言語で表記されたアストロラーベが存在しますが、このレプリカはラテン語で書かれています。
以下、この紙製アストロラーベを使って説明していきます。

 

構造と各部のなまえ

アストロラーベには、表と裏の二面があります。まずは全体の一覧図から。
■印は固定部品、●印は可動部品です。
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表面の部品

1■ マーテル/基盤 (Mater)
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アストロラーベの基盤・土台。360度の角度目盛り(アラビア数字)、24時間の時刻目盛り(ローマ数字)が表示されている(12時間時計で言うと、6時の位置が深夜0時に相当)。

2■ ティムパン/円盤 (Tympan)
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マーテルの上に乗った円盤で、その場所の高度方位の座表線が、実際の天空とは東西反転して描かれている。
※ティムパンはその場所の緯度によって内容が変わるため、本来は複数のバージョンが用意され、場所に応じて取り替えなければいけません。
しかしこのレプリカ製品はスペイン製のため、おおよそ首都マドリードの位置する緯度41度に固定されています。ヨーロッパならイタリアのサルデーニャ島やナポリ、日本なら青森県がだいたい同緯度です。

3● リート/枠円盤 (Rete)
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ティムパンの上に乗った枠状(もしくは網状)の回せる円盤で、星図が描かれている。黄道12宮や、明るい恒星(シリウス、リゲル、ベガ)など。ティムパン同様、東西反転している。

4● ルール/定規 (Rule)
太陽の位置を固定するための目印。

5■ ポスト/留め金 (Post)

 

裏面の部品

1■ 黄経目盛り
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外側の目盛り。360度目盛り(アラビア数字)と、黄道12宮目盛り(絵)が刻まれている。

2■ 日付目盛り
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内側の目盛り。1月から12月までの「月」(ラテン語)と、1日から31日までの「日」(アラビア数字)が刻まれている。

3● アリダード (Alidade)
定規状の棒。

 

日の出時刻を求める

それではアストロラーベを使って、きょう6月10日の日の出時刻を求めてみましょう。
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【1】 まずは裏面を使って、6月10日の星座宮と区間目盛りを調べます。内側のカレンダーで、「6月」(JVNIUS)→「10日」(10)の目盛りを探す。それを外側へ伸ばすと、星座宮は「ふたご座」(絵)、目盛りは18くらいであると分かります。

【2】 次に表面へ。リートの黄道リング上で、「ふたご座」(GEMINI)の18の目盛りを探します。これが6月10日の太陽の位置となります。この位置にルール(定規)を固定しましょう。

【3】 2で固定した太陽の位置が、ティムパン上の東の地平線に接するまで、リートを回します。地平線というのは、この図で言うとアイボリー色(昼)と青色(夜)との境界線に相当します。また実際の天体とは東西反転していますので、向かって左手が東です。

【4】 このとき、ルールが指しているマーテル(基盤)上の24時間目盛りを読みます。ここでは「Ⅳ」、つまり早朝4時を少し過ぎた辺りですので、4時10分ほどでしょうか。
よって、6月10日の日の出時刻は4月10分頃であると分かりました。

日の出時刻が分かれば、日没時刻も簡単に求められます。手順【3】で、リートを東ではなく西(向かって右)の地平線に接するまで回せばよいのです。すると、日の入りは19時10分頃と分かります。
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このように太陽の出没時刻予測のほか、測量など1000以上の使用法ができる万能アナログ計算機。それが、アストロラーベです。夜空を仰ぎつつ、中世天文学の世界に浸ってみませんか?

【参考サイト】
アストロラーベについて (出雲晶子さんのサイト)
http://lv1uni.web.fc2.com/astrolabe/alabe2.html

2014年6月 9日 (月)

本当はひどかった星座の由来

 12星座の由来がギリシャ神話である、というのは有名な話でしょう。プラネタリウムでも、星空の美しい映像が流れ、これは巨人オリオン、これは弓を射るケンタウロス……と解説されます。
 しかし、そうした(とりわけ子供向けの)説明の多くは、きれいで無難な形にまとめられたもの。星座の由来であるギリシャ神話を詳しく読むと、驚きを覚えるに違いありません。「こんな理由で星座になったんかい!」と言いたくなるような、ろくでもないものばかりなのですから。

 例えば、「さそり座」。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』では、殺生を繰り返していたサソリが、今際のきわに懺悔し、自己犠牲の精神に目覚めたところを神に救済され、夜空で永遠に赤く燃える炎となる――という、美しい逸話がありますね。あれは、賢治の創作です。子供の頃読んだ、あのイメージを抱いていると、ギリシャ神話のひどさに仰天してしまいます。
 海神ポセイドンの息子オリオンは、狩りの達人。「俺は世界一の狩人さ!」と思い上がっています。それを聞いた、プライドの高い狩りの女神アルテミスはブチ切れて、オリオンを殺すことにします(沸点低すぎ……)。女神に遣わされたサソリは、猛毒のある尾でオリオンのかかとを刺し、彼を死に至らしめます。サソリはその功績により、天高く「さそり座」となりましたとさ。
 宮沢賢治って、本当にイマジネーション豊かな詩人だと思うんですよ。一体どうしたら、この酷すぎる神話から、あんな美しく尊いサソリの話が書けるんでしょうか? ちなみに賢治はオリオンも好きで、彼の作詞した歌や詩の中に登場します。

 この種の、「誰それを殺害した(or苦しめた)功績によって、星座にしてもらえた」式の由来が、実は一番多いのです。ゼウスの正妻ヘラが、夫と人間の女との間に生まれたヘラクレスを殺そうと、動物たちをけしかけたのが、「かに座」「しし座」の由来です。獅子はともかく、蟹は海辺の小さな可愛い生き物ではなく、カニ型の巨大な化け物(ヒュドラ)ですからね。

 それに次いでろくでもないのが、略奪系のエピソードでしょうか。
 「おうし座」はエウロペの物語。フェニキアの王女エウロペを誘惑しようと、ゼウスが白い牡牛に化ける。「まあ、綺麗な牛さん……」と彼女がまたがった瞬間に疾走、そのままクレタ島に誘拐。このエウロペの名が「ヨーロッパ」の由来なんですけど、ヨーロッパ人は嫌じゃないのでしょうかね?

 ゼウスは女好きでしたが、美少年も好きでした。トロイアの王子ガニュメデスが美少年だったので、大鷲に化けてさらっていってしまいました。で、自分のお小姓さんにして、お酌とかさせます。息子がいなくなり両親は嘆き悲しみますが、それを伝え聞いたゼウスは、「大丈夫、天界でちゃんと元気にしてるから。ほら、こんな風に!」と、水甕から酒を注ぐ少年の姿を夜の星座「みずがめ座」にし、父母の悲しみを癒したのでした。って、全然癒されないだろ……。

 あと、「てんびん座」が、正義の女神アストライアの持つシンボルだというのは、比較的有名かと思いますが、それは、どんどん堕落していく人間に愛想を尽かした女神が、置き去りにしていった天秤だということは、あまり知られていないような気がします。むしろ、できれば広めたくないという空気を感じます。

 ちょっと切ないものでは、不死の種族が苦しみから逃れるために死を願い、不憫に思ったゼウスによって星座にされる、という話もあります。「ふたご座」(カストルポリュデウケス)や「いて座」(ケンタウロスの賢者ケイロン)がそれです。ここだけ聞くと、泣ける話のように思えますが、死を願うまでの苦しみに至った経緯が野蛮なので、あまり同情の余地はありません。

うお座」と「やぎ座」は同じエピソードが由来です。
 ある日、ナイル川のほとりで神々が宴を開いていると、テュポンという怪物が現れました。神々はいろんな姿に変身して逃げるのですが、美の女神アフロディテ(ヴィーナス)と子供のエロス(キューピッド)は、魚に変身して川を泳ぎます。二人ははぐれないよう、体をリボンで結び、その母子の仲睦まじい姿が「うお座」となりました。おおっ、初めてのいい話!
 一方、森の牧神パーンは、魚に変身するつもりが慌てていたため、上半身がヤギ、下半身が魚という変な姿になってしまいました。それが可笑しかったので、ゼウスが面白がって天に上げ、「やぎ座」にしましたとさ。……なんと言いますか、これのせいで、折角の「うお座」のいい話までブチ壊しになってしまうと感じるのは、私だけでしょうか?

 残りの、「おひつじ座」と「おとめ座」のエピソードは、まあ、まともな話です。しかし、今ひとつ印象に残らない逸話であることも確か。やはり、後世の人々に長く語り伝えられるためには、少々ろくでもない話であるくらいが、ちょうどいいのかもしれません。

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