中世占星術師になれる? はじめてのアストロラーベ
きょう6月10日は「時の記念日」。
中世の美しい天文器具アストロラーベを使って、日の出・日の入りの時間を求める方法を解説します。
(※なお、これを身につけたからと言って、現代日本では特に有用性のない技術です。山や海で遭難してしまい携帯品はアストロラーベだけ……といった特異な状況であれば、ひょっとして役立つかもしれません)
アストロラーベ(Astrolabe)とは?
10世紀頃アラビアで発明され、中世~近世にかけてイスラーム圏や欧州の天文学者、占星術師者が用いた天体観測機器。(詳細はこちらの参考サイトへ)
アストロラーベ(レプリカ)を入手する
本物の骨董品となると大変高価で入手困難ですが、アストロラーベのレプリカならば比較的安価に(数千~数万円程度)求めることができます。私が持っている紙製レプリカはこちら:
スペインAntiquus社 天文ポストカード・シリーズ
国内では、イタリア古典文具店のGiovanniジョヴァンニ(吉祥寺/池袋店)などで取扱いあり
アラビア語、ペルシャ語など様々な言語で表記されたアストロラーベが存在しますが、このレプリカはラテン語で書かれています。
以下、この紙製アストロラーベを使って説明していきます。
構造と各部のなまえ
アストロラーベには、表と裏の二面があります。まずは全体の一覧図から。
■印は固定部品、●印は可動部品です。
表面の部品
1■ マーテル/基盤 (Mater)
アストロラーベの基盤・土台。360度の角度目盛り(アラビア数字)、24時間の時刻目盛り(ローマ数字)が表示されている(12時間時計で言うと、6時の位置が深夜0時に相当)。
2■ ティムパン/円盤 (Tympan)
マーテルの上に乗った円盤で、その場所の高度方位の座表線が、実際の天空とは東西反転して描かれている。
※ティムパンはその場所の緯度によって内容が変わるため、本来は複数のバージョンが用意され、場所に応じて取り替えなければいけません。
しかしこのレプリカ製品はスペイン製のため、おおよそ首都マドリードの位置する緯度41度に固定されています。ヨーロッパならイタリアのサルデーニャ島やナポリ、日本なら青森県がだいたい同緯度です。
3● リート/枠円盤 (Rete)
ティムパンの上に乗った枠状(もしくは網状)の回せる円盤で、星図が描かれている。黄道12宮や、明るい恒星(シリウス、リゲル、ベガ)など。ティムパン同様、東西反転している。
4● ルール/定規 (Rule)
太陽の位置を固定するための目印。
5■ ポスト/留め金 (Post)
裏面の部品
1■ 黄経目盛り
外側の目盛り。360度目盛り(アラビア数字)と、黄道12宮目盛り(絵)が刻まれている。
2■ 日付目盛り
内側の目盛り。1月から12月までの「月」(ラテン語)と、1日から31日までの「日」(アラビア数字)が刻まれている。
3● アリダード (Alidade)
定規状の棒。
日の出時刻を求める
それではアストロラーベを使って、きょう6月10日の日の出時刻を求めてみましょう。
【1】 まずは裏面を使って、6月10日の星座宮と区間目盛りを調べます。内側のカレンダーで、「6月」(JVNIUS)→「10日」(10)の目盛りを探す。それを外側へ伸ばすと、星座宮は「ふたご座」(絵)、目盛りは18くらいであると分かります。
【2】 次に表面へ。リートの黄道リング上で、「ふたご座」(GEMINI)の18の目盛りを探します。これが6月10日の太陽の位置となります。この位置にルール(定規)を固定しましょう。
【3】 2で固定した太陽の位置が、ティムパン上の東の地平線に接するまで、リートを回します。地平線というのは、この図で言うとアイボリー色(昼)と青色(夜)との境界線に相当します。また実際の天体とは東西反転していますので、向かって左手が東です。
【4】 このとき、ルールが指しているマーテル(基盤)上の24時間目盛りを読みます。ここでは「Ⅳ」、つまり早朝4時を少し過ぎた辺りですので、4時10分ほどでしょうか。
よって、6月10日の日の出時刻は4月10分頃であると分かりました。
日の出時刻が分かれば、日没時刻も簡単に求められます。手順【3】で、リートを東ではなく西(向かって右)の地平線に接するまで回せばよいのです。すると、日の入りは19時10分頃と分かります。
このように太陽の出没時刻予測のほか、測量など1000以上の使用法ができる万能アナログ計算機。それが、アストロラーベです。夜空を仰ぎつつ、中世天文学の世界に浸ってみませんか?
【参考サイト】
アストロラーベについて (出雲晶子さんのサイト)
http://lv1uni.web.fc2.com/astrolabe/alabe2.html
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