谷崎潤一郎「天鵞絨の夢」について(2)
10/22の朗読会に向けて、谷崎潤一郎「天鵞絨の夢」や朗読会情報をお伝えする記事、第2弾です。
今回は朗読会のこと。演出や稽古の舞台裏について紹介します。
作品研究
まずは作品を徹底的に読み込み、研究するところから始まります。
『谷崎潤一郎全集』(中央公論社刊)を底本として「天鵞絨の夢」原典を精読。
本作は大正8年11月~12月にかけて朝日新聞に連載されたのですが、その連載初出時と、のちに単行本化したときの文章にはかなりの異同があります。
こういう細かい点も逐一チェック。
そして、「天鵞絨の夢」について書かれた研究論文にも目を通します。
そのほか、オリエンタリズムやマゾヒズムなど本作の主題に関係するあらゆる文献。
こういった資料は演出の私(坂本)だけでなく、出演者の鏡谷さんにも送って読んでもらっています。
演出プラン
「天鵞絨の夢」は未完作品であるため、現行のテクストを一字一句そのまま朗読するわけにはいきません。
そこで、設定に難があるとされる発端(プロローグ)部分は適宜脚色する代わりに、少年と少女奴隷の物語を原典通り忠実に読んでいく方針にしました。
奇妙な閉鎖空間に置かれた、少年と少女との切なくも美しい恋の物語をどう表現するか?
様々なアイデアを出しつつ、役者とも話し合いながら決めていきます。
壮大で複雑な構造の館を舞台にした物語なので、こんな風に見取り図や人物関係図のメモを作ることも……。
万事が順風満帆とは行きません、私が徹夜で書いた脚色台本を一瞬で却下されたこともあります(苦笑)。
朗読の稽古
役者は毎日自主稽古をしていますが、私と実際に対面できる機会は限られているため、やりとりは遠隔稽古がメインです。
鏡谷さんに読んでもらった録音音声を聞き、抑揚や間合いなどを坂本が細かくチェックして指示を出します。
指示の内容は、各パートの朗読にかかる時間をストップウォッチで測って「ここは間合いを3割減に」とか「××分以内に収めてください」といった数値的なものもあれば、
「焦燥感が足りてないです」
とか、
「もうちょっと春琴抄の佐助みたいな感じにできませんか」
とみたいなことも要求します。
もちろん、鏡谷さんの方から「ここはこうしたら」という相談や提案をもらうこともあります。
考えて、話し合って、実際やってみて……。とにかくこの試行錯誤の繰り返しですね。
照明、音響、衣裳、小道具など
朗読なのでいわゆる「演劇」とは少し違いますが、ただ何の工夫もない一室に椅子だけを置いてやればいい、というものではありません。
照明や音響には工夫をこらす必要があり、衣裳や小道具なども揃えなければなりません。
骨董屋や蚤の市などへ行き、中国風のものを探してきます。
おわりに
このように日々稽古をしたり、公演のための準備を進めております。
「へぇ、朗読会ってこんな感じでやるのか」というイメージを持って頂けましたら幸いです。
ご興味のある方は、ぜひ10/22の公演へお運びくださいませ。
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朗読会「天鵞絨の夢」
水辺に建つ白亜の館、それは綺想の楽園にして「女王」の魔睡の褥だった――
第一部:朗読劇『天鵞絨の夢』より「第一と第二の奴隷の告白」(鏡谷眞一)
第二部:トーク「谷崎潤一郎の人工楽園」(坂本葵)
10/22(日) 17:00-19:00
猫々文庫(東京都杉並区)
料金1500円、抽選申込制、定員15名
※申し込みはこちらから(Googleフォームが開きます)
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新装復刊『天鵞絨の夢』
この朗読会に合わせて、谷崎潤一郎『天鵞絨の夢』(大正9年天佑社)を、個人出版(藍色手帖)にて新装復刊しました。
A5並装112頁、解説付き。表紙はG.バルビエの挿絵を元に新制作しました。
当日の会場にて(定価1000円)、もしくはクラウドファンディング経由で入手できます。
ご来場予定のない方には、郵送もできるクラウドファンディングがお勧めです。
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