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2016年7月

2016年7月14日 (木)

古代ギリシャのとんでもないワイン(2)

(前編からのつづき)

3. 試食

食材が揃ったところで、いよいよ試食開始です!

そのまま

最初にワインもチーズも玉ねぎも、混ぜずにそのまま食してみます。
古代風のリュトン(杯)でもあればいいんですが、ないのでグラスで飲みます。うおーヘラクレスの血~!

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ただし、古代ギリシャではワインは水割りで飲むのが「善良なる市民」の常識(生で飲むのは野蛮人扱い)だったので、2:3で水割りします。古代風のクラテール(攪拌用の酒器)でもあればいいんですが、ないので計量カップで混ぜます。うん、飲みやすくておいしい! お酒に弱い私のような人種は、こちらの方が断然飲みやすいです。

今度はチーズ。
羊乳と山羊乳のフェタ(ギリシャ産)。ポロポロと崩れやすく柔らかいチーズですが、塩味と酸味があっておいしい。ちなみに、見た目は木綿豆腐と完全に一致です。
羊のペコリーノ・ロマーノ(イタリア産)。ハード系で、ピリッとしょっぱいチーズ。これはすりおろして振りかけると、アクセントになりそう。
山羊のカブラ・アル・ビーノ(スペイン産)。表面がブドウ色に染まった赤ワイン漬けのチーズです。山羊チーズはクセのあるものが多いですが、これはワインのおかげか嫌なクセがほとんどない! 先日「古代ローマ料理会」で賞味した、イタリア・アブロッツォ州のインブリアーゴ(ブドウ酒漬けの「酔っ払い」チーズ)に似て、芳醇な味わいです。

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玉ねぎは、辛味が抜けるよう水によくさらして…。

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チーズを入れろ

さあ、いよいよ覚悟を決めて、チーズとワインを混ぜてみますか…。
まずは一番被害(?)の少なそうなペコリーノから。
おろし金ですりおろし、水割りワインの中へ振りかけてみます。どれどれ…。

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なんだ、思ったほどマズくないじゃないですか! 心配していたほど脂臭いわけでもない。まあ、敢えて「おいしいか」と言われると謎ですけど、「古代式ソルティフレーバーワイン」だと思えば、ちょっと面白い感じだと思います。同様にカブラも試しましたが、こういう用途にはやはり、ペコリーノのようなハード系の方が向いていますね。

では、ついに、本命かつ一番ヤバそうなフェタ行きます。
ワインの中へフェタチーズを投入!
…が、ただ入れてかき混ぜただけでは中途半端にしか混ざらないようなので、いったん別容器に移し替え、すりこぎを使って丹念に混ぜ合わせます。なお、「チーズどろどろ&生ぬるいワイン」というのはさすがに気持ち悪そうだったので、混ぜたあとで改めて冷やしました。
すると、見てください! ワインの赤とフェタの白が中和して、ピンク色のカクテルみたいなオシャンティな飲み物ができちゃったぞ!!

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古代ギリシャにナイトラウンジがあったかどうか知らないけどさ、これ酒神ディオニュソス様がマスターを務める会員制クラブ(美しいバッカスの巫女たちがホステス役)とかで出してそうなお酒じゃない?

で、肝心な味の方はといいますと、いわく言い難い不思議な味…。だが、決してマズくはないです。「ワイン」だと思って飲むと限りなく意味不明ですが、そう、たとえばですね――

ギリシャのド田舎の山岳地帯。旅をしてすっかりくたびれていたところ、羊飼いのお婆さんが手招きして、何やら羊の乳とワインを混ぜて作ったらしい謎の飲み物を差し出す。咽喉の渇きに耐えられず、勧められるままに一口飲んでみると……何これ、変わった味だけどおいしい! 塩分も補給! 私のHPは回復した!!

……まあ、こんなイメージでしょうか。分かります? すごく「羊飼い」な雰囲気の飲み物(もはやワインかどうかは謎)なんですよ。

玉ねぎを入れろ

この辺で止めておいた方がいいような気がしますけど、ええい、毒を食らわば皿まで! 玉ねぎを投入だ!! 写真が怪しさしかないぞ。

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というわけで3種類の玉ねぎを、ピンク羊飼いドリンク(仮)に投入してみたのですが、あれ? と拍子抜けするほどエグみもヤバさもありません。これでは今ひとつインパクトがないので、アーリーレッドをすりおろして(まるでワインのような鮮やかな色!)、小さじ1杯を加えると…。

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おお…! 余計訳が分からなくなった。というかこれはもう、滋養強壮系ドリンクだ。「ピンク羊飼いエナジードリンク(仮)」だ。見た目のオシャレ感に反して、たいへん土俗的な味わいです。村の勇者とか、吸血鬼ハンターとかが戦闘前に飲んでそうなイメージ。

4. まとめ

古代ギリシャ式チーズと玉ねぎのワイン、いかがでしょうか。ピンク羊飼いエナジードリンク、あなたも試してみたくなりましたか?
今回の試行錯誤で得られた、重要な注意ポイントをいくつか挙げておきます。

  • なるべく手軽なところから試したい人は、パルメザンチーズをワインに振ってみるところから始めましょう。これはいけると思ったら、どんどんエスカレートすればいいんじゃないでしょうか。
  • 瓶入りのオイル漬けフェタチーズは買っちゃダメ絶対。
  • フェタとワインを混ぜるときは、いきなり全部を混ぜるのではなく、少しずつワインを加えていくとよい。すりこぎの使用を推奨。時間をかけてしっかりかき混ぜて。
  • 冷やした方がおいしく賞味できます。ぬるいとまずいよ。
  • 個人的には玉ねぎはない方が飲みやすいと感じましたが、オニオン好きな人、エナジードリンク好きな人は、少量ずつ玉ねぎの絞り汁を入れてみてお試しください。

最後になりますが、シシンさん、いつも興味深い古代ギリシャ情報をありがとう!

そして、来たる7/18(月祝)には、「音食紀行 古代ギリシャの宴~お魚料理編~」という、海の日にふさわしいイベントが予定されています。こちらもおすすめですので、興味のある方はぜひ。

古代ギリシャのとんでもないワイン(1)

古代ギリシャ人は、ワインにチーズや玉ねぎを混ぜて飲んでいた!
それは果たして我々が経験したこともない美味珍味か、それとも禁断の激マズ料理か?
実際に試してみたレポートをご覧あれ!

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1. 発端

東京国立博物館で開催中の「特別展 古代ギリシャ」。去る7月7日に行われた、音楽&トークイベント「古代ギリシャ ナイトミュージアム」にて、出演者の藤村シシンさんが、こんな古代ギリシャの食情報をお話しして下さいました。
「古代ギリシャではワインを水で割るのが基本でしたが、その他にも海水を使うとか、チーズや玉ねぎを使うというレシピもあったんです。私も実際やってみましたが…すごくマズかったですね
そりゃあ当然だろう…と思う一方、この「チーズ入りワイン」なる代物が、どうも私の頭に引っかかって気になりました。

かのホメロスの『イリアス』にも、ヘカメデが英雄たちにワインを振舞うこんな場面があります。
「いまその器に 皆のために、女神と見まがうその女は、プラムノスの酒で混粥(*キュケオン)をつくり、山羊の乾酪(チーズ)を 青銅の下しで擦って、白い麦粒を上にふり掛けてから、混粥の用意がすべて調ったとき、飲むようにと、すすめて出した。さても二人は飲み干して…」 (XI, 638–641. 呉茂一訳)
この、現代人からすると「飲み物」なのか「お粥」なのかよく分からない謎めいたキュケオンは、やはりワインと麦とチーズで作られた「飲み物」なのです。

もしかして、チーズ入りワインって、実はすごい飲み物なのでは? これを飲めば、古代ギリシャの世界に束の間トリップできちゃうのでは?
そんな好奇心が発端となって、禁断の「古代ギリシャ風・チーズと玉ねぎ入りワイン」に挑戦してみることにしました。

2. 食材調達

ワイン

ギリシャワインには、「NEMEAネメア 2010 スペリオーレ」(赤・辛口)を選びました。ペロポンネソス半島ネメアで栽培される、アギォルギティコ (Agiorgitiko)というブドウ品種です。説明文によれば、”古代から知られており、深く濃い赤色のワインになることから、このブドウは「ヘラクレスの血」と呼ばれる”と。ヘラクレスの血!

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チーズ

次にチーズを調達。都内のデパ地下では屈指の品ぞろえを誇る(と私は思ってるんですが)、日本橋三越のチーズ売り場<Cheese on the table>へ。

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店員さん「いらっしゃいませ! 今日はどのようなものをお探しでしょう?」
坂本「あー実はちょっとですね、ギリシャの赤ワインにチーズを―」
店「ワインのおつまみにぴったりのチーズ、でございますね」
坂「いえ、つまむんじゃなくて、混ぜて飲みたいんですよワインの中に」
店「フアッ?!」

もう、この時点で店員さんにドン引きされてる100%変な人なんですが、恥を厭わず相談してみることに。

坂「古代ギリシャの人がそういう飲み方をしていたそうで、試してみたいと思うんですが」
店「なるほど、ワインの中へチーズを入れるんですか…。確かに、そうすることでチーズの臭みが取れるので、チーズは美味しく召し上がれるかもしれません。ですが逆に、ワインには脂や臭みが移ってしまうので、まず美味しくはならないかと

ああ、やっぱりそうなのか…。でも、やると決めた以上ダメ元で構わないので、もう少しチーズ選びにお付き合いしてもらうことにしました。

「ギリシャと言えばフェタチーズですね。”最古のチーズ”とも呼ばれていますので、古代の人が食べていたチーズに一番近いかもしれません」
そこで、よく店先で見かける定番の瓶入りフェタに手を伸ばそうとしたところ、
「あっ、そちらはやめた方が。オリーブオイル漬けですのでワインに油が浮かんでしまい、とても飲める状態ではなくなります。こちらの、オイル漬けでない方はいかがですか?」
と店員さんがアドバイスを。確かにその通り! (もしかしてシシンさんが「激マズだった」というの、瓶入りフェタをお使いになったのでは?)

そのほか羊のペコリーノ・ロマーノ、山羊のカブラ・アル・ビーノを購入。

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玉ねぎ

最後に玉ねぎ、これは近所のスーパーで。チーズ以上にワインの中へ入れたらヤバそうな予感しかしないので、ちょっとでも質のいいものを…。玉ねぎ、アーリーレッド、そしてペコロスの3種類を買いました。玉ねぎが悲惨だった場合に備えて、ローズマリーもカゴに入れとくか。

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(次ページ:食材が揃ったところで、いよいよ試食開始です!…)

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