古代ギリシャのとんでもないワイン(2)
(前編からのつづき)
3. 試食
食材が揃ったところで、いよいよ試食開始です!
そのまま
最初にワインもチーズも玉ねぎも、混ぜずにそのまま食してみます。
古代風のリュトン(杯)でもあればいいんですが、ないのでグラスで飲みます。うおーヘラクレスの血~!
ただし、古代ギリシャではワインは水割りで飲むのが「善良なる市民」の常識(生で飲むのは野蛮人扱い)だったので、2:3で水割りします。古代風のクラテール(攪拌用の酒器)でもあればいいんですが、ないので計量カップで混ぜます。うん、飲みやすくておいしい! お酒に弱い私のような人種は、こちらの方が断然飲みやすいです。
今度はチーズ。
羊乳と山羊乳のフェタ(ギリシャ産)。ポロポロと崩れやすく柔らかいチーズですが、塩味と酸味があっておいしい。ちなみに、見た目は木綿豆腐と完全に一致です。
羊のペコリーノ・ロマーノ(イタリア産)。ハード系で、ピリッとしょっぱいチーズ。これはすりおろして振りかけると、アクセントになりそう。
山羊のカブラ・アル・ビーノ(スペイン産)。表面がブドウ色に染まった赤ワイン漬けのチーズです。山羊チーズはクセのあるものが多いですが、これはワインのおかげか嫌なクセがほとんどない! 先日「古代ローマ料理会」で賞味した、イタリア・アブロッツォ州のインブリアーゴ(ブドウ酒漬けの「酔っ払い」チーズ)に似て、芳醇な味わいです。
玉ねぎは、辛味が抜けるよう水によくさらして…。
チーズを入れろ
さあ、いよいよ覚悟を決めて、チーズとワインを混ぜてみますか…。
まずは一番被害(?)の少なそうなペコリーノから。
おろし金ですりおろし、水割りワインの中へ振りかけてみます。どれどれ…。
なんだ、思ったほどマズくないじゃないですか! 心配していたほど脂臭いわけでもない。まあ、敢えて「おいしいか」と言われると謎ですけど、「古代式ソルティフレーバーワイン」だと思えば、ちょっと面白い感じだと思います。同様にカブラも試しましたが、こういう用途にはやはり、ペコリーノのようなハード系の方が向いていますね。
では、ついに、本命かつ一番ヤバそうなフェタ行きます。
ワインの中へフェタチーズを投入!
…が、ただ入れてかき混ぜただけでは中途半端にしか混ざらないようなので、いったん別容器に移し替え、すりこぎを使って丹念に混ぜ合わせます。なお、「チーズどろどろ&生ぬるいワイン」というのはさすがに気持ち悪そうだったので、混ぜたあとで改めて冷やしました。
すると、見てください! ワインの赤とフェタの白が中和して、ピンク色のカクテルみたいなオシャンティな飲み物ができちゃったぞ!!
古代ギリシャにナイトラウンジがあったかどうか知らないけどさ、これ酒神ディオニュソス様がマスターを務める会員制クラブ(美しいバッカスの巫女たちがホステス役)とかで出してそうなお酒じゃない?
で、肝心な味の方はといいますと、いわく言い難い不思議な味…。だが、決してマズくはないです。「ワイン」だと思って飲むと限りなく意味不明ですが、そう、たとえばですね――
ギリシャのド田舎の山岳地帯。旅をしてすっかりくたびれていたところ、羊飼いのお婆さんが手招きして、何やら羊の乳とワインを混ぜて作ったらしい謎の飲み物を差し出す。咽喉の渇きに耐えられず、勧められるままに一口飲んでみると……何これ、変わった味だけどおいしい! 塩分も補給! 私のHPは回復した!!
……まあ、こんなイメージでしょうか。分かります? すごく「羊飼い」な雰囲気の飲み物(もはやワインかどうかは謎)なんですよ。
玉ねぎを入れろ
この辺で止めておいた方がいいような気がしますけど、ええい、毒を食らわば皿まで! 玉ねぎを投入だ!! 写真が怪しさしかないぞ。
というわけで3種類の玉ねぎを、ピンク羊飼いドリンク(仮)に投入してみたのですが、あれ? と拍子抜けするほどエグみもヤバさもありません。これでは今ひとつインパクトがないので、アーリーレッドをすりおろして(まるでワインのような鮮やかな色!)、小さじ1杯を加えると…。
おお…! 余計訳が分からなくなった。というかこれはもう、滋養強壮系ドリンクだ。「ピンク羊飼いエナジードリンク(仮)」だ。見た目のオシャレ感に反して、たいへん土俗的な味わいです。村の勇者とか、吸血鬼ハンターとかが戦闘前に飲んでそうなイメージ。
4. まとめ
古代ギリシャ式チーズと玉ねぎのワイン、いかがでしょうか。ピンク羊飼いエナジードリンク、あなたも試してみたくなりましたか?
今回の試行錯誤で得られた、重要な注意ポイントをいくつか挙げておきます。
- なるべく手軽なところから試したい人は、パルメザンチーズをワインに振ってみるところから始めましょう。これはいけると思ったら、どんどんエスカレートすればいいんじゃないでしょうか。
- 瓶入りのオイル漬けフェタチーズは買っちゃダメ絶対。
- フェタとワインを混ぜるときは、いきなり全部を混ぜるのではなく、少しずつワインを加えていくとよい。すりこぎの使用を推奨。時間をかけてしっかりかき混ぜて。
- 冷やした方がおいしく賞味できます。ぬるいとまずいよ。
- 個人的には玉ねぎはない方が飲みやすいと感じましたが、オニオン好きな人、エナジードリンク好きな人は、少量ずつ玉ねぎの絞り汁を入れてみてお試しください。
最後になりますが、シシンさん、いつも興味深い古代ギリシャ情報をありがとう!
そして、来たる7/18(月祝)には、「音食紀行 古代ギリシャの宴~お魚料理編~」という、海の日にふさわしいイベントが予定されています。こちらもおすすめですので、興味のある方はぜひ。
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