古代ギリシャを描いた小説
古代史ファンにすすめる!
「古代ギリシャ」を描いた小説(歴史小説・ミステリ・ファンタジー)のブックリスト9作品です。
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歴史小説
ピエール・ルイス『アフロディテ』
Pierre Louÿs, Aphrodite - Mœurs Antiques, 1896|沓掛良彦訳、平凡社ライブラリー、1998
古代ギリシャの崇拝者であるフランスの耽美派詩人、ピエール・ルイス最初の長編小説。
エジプト、プトレマイオス朝のアレクサンドリア。
都市一番の美女と謳われる神聖娼婦クリュシスは、女王の愛人で「アポロンのように美しい」彫刻家デメトリオスと出会い…。
ギリシア神話を下敷きにした、愛とエロスの物語。
ジョルジュ・バルビエが美しい挿絵本を描いている(1954)。
ピエール・ルイス『ビリティスの唄』
Pierre Louÿs, Les Chansons de Bilitis, 1894|沓掛良彦訳、水声社、2003
サッフォーと同時代(紀元前6世紀)の女流詩人ビリティスの詩を翻訳したもの、という体裁で出版された散文詩集。
知られざる詩人だったビリティスの墓が19世紀になって発見された経緯を本当らしく記した序文など、ルイスの筆があまりに巧みだったため、ビリティスという詩人が実在すると信じてしまった読者続出。
大真面目に論じて恥を書いた文芸評論家もいた。
それはともかく、バルビエの挿絵つき豪華本(1922)は必見である。
(バルビエは『ビリティスの唄』を3回=1910、1922、1929=手がけている。一般に知られているのは第2版。第3版は「秘密の歌」と呼ばれ25部だけ限定出版された)
阿刀田高『獅子王アレクサンドロス』
講談社、1997(2000年文庫化)
紀元前4世紀、ギリシャからインドに及ぶ大帝国を築き上げたアレクサンドロス大王。
その波乱に満ちた生涯を描いた歴史小説。
阿刀田高『新トロイア物語』
講談社、1994(1997年文庫化)
絶世の美女にしてスパルタ王妃のヘレネと恋に落ちた、トロイア王子パリス。
駆け落ちした王妃を奪還するため、ギリシャとトロイアの戦争が始まった。
メアリ・ルノー『アレクサンドロスと少年バゴアス』
Mary Renault, The Persian Boy, 1972|堀たほ子訳、中央公論新社、2005
「アレクサンドロス三部作」のひとつ。
未曾有の世界帝国を築いた、マケドニアのアレクサンドロス大王。
アケメネス朝ペルシアのダレイオス王に愛され、のちにアレクサンドロスに仕えた美少年バゴアスの視点から、英雄の生きざまを描いた歴史ロマン。
古代ギリシャでは全く珍しくないことながら、アレクサンドロスはバイ・セクシャルだったようですね。
宦官バゴアスも実在の人物です。
歴史ミステリ
マーガレット・アン・ドゥーディ『哲人アリストテレスの殺人推理』
Margaret Doody, Aristotle Detective, 1978|左近司祥子訳、講談社、2005
アリストテレスを探偵役とする哲学ミステリー。
BC332年、アレクサンドロス大王支配下のアテナイで有力貴族ブータデスが殺された。
親ペルシャ派と目され前科によって追放中のフィレモンに疑いの目が向けられる。
リュケイオンに学んだステファノスは、不在のいとこの無罪を晴らすべくプロディカシア(予備審問)での弁論に立つために、師アリストテレスに援助を乞う。
アテナイの知性・哲学者アリストテレスが推理解明する事件の真実とは?
本作は「アリストテレス」シリーズの第1作。現在8作ほど出版されているが、他は未邦訳。
ちなみに、著者も訳者も大学に籍を置く研究者です。
柳広司『饗宴 ソクラテス最後の事件』
創元推理文庫、2007
ペロポネソス諸国との戦争をきっかけに、アテナイは衰微の暗雲に覆われつつあった。
そんななか、奇妙な事件が連続して発生する。
若き貴族が衆人環視下で不可解な死を遂げ、アクロポリスではばらばらに引きちぎられた異邦の青年の惨殺死体が発見されたのだ。
すべては謎の“ピュタゴラス教団”の仕業なのか?
哲人ソクラテスが、比類なき論理で異形の謎に挑む!
野心溢れる本格推理。
柳広司『パルテノン』
実業之日本社文庫、2010
ペルシャ戦争に勝利し映画を極めたアテナイを舞台としたミステリ、3篇を収録。
・「パルテノン」パルテノン神殿の設計者フェイディアスと、アテナイの最高指導者ペリクレス
・「巫女」デルポイの巫女アリストニケ
・「テミストクレス案」ペルシア軍を海戦で破ったテミストクレス
歴史ファンタジー
荒俣宏『幻想皇帝―アレクサンドロス戦記』
角川春樹事務所、1996-97、全3巻
戦国時代の日本。イエズス会の宣教師フロイスが織田信長に語る。
「西洋には二千年前、歴山大王(アレクサンドロス)という偉大な王がいました。その王は、信長様にとてもよく似ています」
フロイスの語りを通じて、アレクサンドロスの物語を綺想に満ちた筆致で描いた伝奇小説。
『アレクサンダー戦記』としてアニメ化もされています(1999)。
【補足】
・矢野龍渓「経国美談」明治16-17
・太宰治「走れメロス」昭和15
・ロバート・グレイブス「ホメロスの娘」Homer's Daughter, 1955.(未邦訳)
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