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2016年1月

2016年1月14日 (木)

古代ローマを描いた小説|歴史小説

古代史ファンにすすめる!
「古代ローマ」を描いた歴史小説のブックリストです。
共和制→帝政 ユリウス・クラウディウス朝→五賢帝時代→セウェルス朝・軍人皇帝時代、とほぼ描かれている時代の時系列に並んでいます。

ミステリ・SF・児童文学は別途リストを作る予定。
古代ギリシャ篇はこちら。

歴史小説

【共和制】

ギュスターヴ・フローベール『サランボー』

Gustave Flaubert, Salammbô,1862|『サランボオ』神部孝訳、角川文庫、1954

第一次ポエニ戦争後の古代カルタゴを舞台に、巫女サランボーの運命を描く。

Project Gutenbergで全文読めます。
http://www.gutenberg.org/files/1290/1290-h/1290-h.htm


佐藤賢一『カエサルを撃て』

中公文庫、2004

ガリアの若き王ウェルキンゲトリクスと、ローマのカエサルとの対決の視点からガリア戦記を描いたもの。


パスカル・キニャール『アルブキウス』

Pascal Quignard, Albucius, 1990|高橋啓訳、青土社、1995

神なき時代の古代ローマで、美しく残酷な物語を書き続けた作家アルブキウスの生涯。


【帝政―ユリウス・クラウディウス朝】

クリストフ・ランスマイアー『ラスト・ワールド』

Christoph Ransmayr|高橋輝暁・高橋智恵子訳、中央公論社、1996

「変身物語」で名高い詩人オウィディウスは、黒海沿岸の流刑地トミスで果てた。その遺稿をもとめて「最果ての地」トミスへ旅立った男の奇譚。


ヘルマン・ブロッホ『ウェルギリウスの死』

Hermann Broch, Der Tod des Virgil, 1945|川村二郎訳、『20世紀の文学7』『新版 世界の文学13』、集英社

詩人ウェルギリウスの死の直前の18時間を描く。
こちらのページに邦訳あり。

ヘルマン・ブロッホ「ウェルギリウスの帰郷」

Hermann Broch, Die Heimkehr des Vergil|入野田真右訳、河出書房新社 モダン・クラシックス『知られざる偉大さ』1975

こちらのページ に邦訳あり。


ニコス・カザンザキス『キリスト 最後の誘惑』

Νίκος Καζαντζάκης, Ο τελευταίος πειρασμός, 1951|児玉操 訳『キリスト最後のこころみ』 恒文社、1982年

ニコス・カザンザキス『ふたたび十字架につけられるキリスト』

Νίκος Καζαντζάκης, Ο Χριστός ξανασταυρώνεται, 1948|児玉操 訳、新風舎、 2003


遠藤周作『死海のほとり』

新潮文庫、1983

エルサレムを訪れた小説家の「私」が描く、人間イエスの生涯。


エドガー・ライス・バロウズ『カリグラ帝の野蛮人』

Edgar Rice Burroughs, I am a Barbarian, 1967|創元推理、1982

ブリトン人の語り手が「息子に読ませるため」に書いたという体裁。カリグラ帝の捕虜となってから、帝が崩御するまでの一代記。


ロバート・グレーヴス『この私、クラウディウス』

Robert von Ranke Graves, I, Claudius, 1934|多田智満子・赤井敏夫訳、みすず書房

淫蕩な皇后メッサリーナの夫として知られる、皇帝クラウディウスによる自伝の形式をとった作品。
続編に『神、クラウディウスとその妻メッサリーナ』(Claudius the God and His Wife Messalina) があるが未邦訳。


ユーベル・モンティエ『ネロポリス』

Hubert Monteilhet, Néropolis: Roman des temps néroniens, 1984|羽林泰訳、中央公論社、1988

紀元一世紀半ば、ネロ帝の時代のローマ貴族やキリスト教徒たちを描く。


シェンキェーヴィチ『クオ・ワディス』

Henryk Sienkiewicz, Quo Vadis, 1895|木村彰一訳、岩波文庫、1995

ネロ帝の時代、ローマの軍人マルクス・ウィニキウスとキリスト教徒の娘リギアとの恋愛を軸に、迫害されたキリスト教徒たちの姿を描く。ポーランド人の作者が、帝政ロシアの圧政を受ける祖国への思いを仮託した作品。


エドワード・ブルワー=リットン『ポンペイ最後の日』

Edward Bulwer-Lytton, The Last Days of Pompeii, 1834|講談社青い鳥文庫、2001

西暦79年、ヴェスヴィオ火山の爆発により火山灰に埋もれて消滅したローマ帝国の町ポンペイ。娯楽色が強く勧善懲悪のストーリーを持った読み物。


ロバート・ハリス『ポンペイの四日間』

Robert Harris, Pompeii, 2003|菊池よしみ訳、ハヤカワNV、2005、

ヴェスヴィオ山が噴火し、都市ポンペイが壊滅するまでの四日間。


テオフィル・ゴーチェ『ポンペイ夜話』

Pierre Jules Théophile Gautier, Arria Marcella ou Souvenir de Pompèi, 1852|田辺貞之助訳、岩波文庫、2002

幻想短編。現代の青年がポンペイの博物館で古代の麗人に烈しく恋をし、噴火直前のポンペイで時空を超えて踊り子の魂が蘇る。


【帝政―五賢帝時代】

トルストイ『光あるうちに光の中を歩め』

Лев Николаевич Толстой, Ходите в свете покА есть свет, 1887|原久一郎訳、新潮文庫、2005

トラヤヌス時代のキリキヤを舞台に、二人の男のそれぞれに異なる求道遍歴の生涯を描く。


マルグリット・ユルスナール『ハドリアヌス帝の回想』

Marguerite Yourcenar, Mémoires d'Hadrien, 1951|多田智満子訳、白水社、2008

五賢帝のひとりハドリヌス帝の伝記小説。病床に伏した皇帝が、後継者マルクス・アウレリウスに宛てた書簡という体裁を取り、自らの人生を振り返る。


【帝政―セウェルス朝・軍人皇帝時代】

ノサック『ルキウス・エウリヌスの遺書』

Hans Erich Nossack, Das Testament des Lucius Eurinus, 1963|圓子修平訳、集英社『世界の文学 20』1977


赤羽堯『流砂伝説』

文藝春秋、1994

3世紀、シリア砂漠の中央に栄えた都市パルミラを治めるゼノビア女王が、ローマ帝国に挑む。


辻邦生『背教者ユリアヌス』

中公文庫、1974

キリスト教化するローマ帝国に、「異教」のギリシャ・ローマの神々を呼び戻そうとしたユリアヌス帝の生涯。


メレシュコフスキー『背教者ユリアヌス 神々の死』

Дмитрий Сергеевич Мережковский, 1894|米川正夫訳、河出書房新社、1986

ロシア象徴派詩人が描く背教者ユリアヌス。


パスカル・キニャール『アプロネニア・アウィティアの柘植の板』

Pascal Quignard, Les Tablettes de buis d'Apronenia Avitia, 1984|高橋啓訳、青土社、2000

西暦4世紀ローマの貴婦人が記した随筆集、という体裁。発表当時、実在のラテン語古典籍の翻訳だと信じた読者もいた。


チャールス・キングスレー『ヒュパティア』

Charles Kingsley, Hypatia, 1853|村山勇三訳『ハイペシア』春秋社、1924

ローマ帝国末期の都市アレクサンドリアを舞台に、実在の天文学者ヒュパティアの悲劇を描く。
上下巻ある長篇ながら、Webで全邦訳(しかも独自の)を公開されている方がいます。

おまけ:ヒュパティアの半生を映画化した「アレクサンドリア」(2009)

2016年1月13日 (水)

古代ギリシャを描いた小説

古代史ファンにすすめる!
「古代ギリシャ」を描いた小説(歴史小説・ミステリ・ファンタジー)のブックリスト9作品です。

古代ローマ篇はこちら

歴史小説

ピエール・ルイス『アフロディテ』

Pierre Louÿs, Aphrodite - Mœurs Antiques, 1896|沓掛良彦訳、平凡社ライブラリー、1998

古代ギリシャの崇拝者であるフランスの耽美派詩人、ピエール・ルイス最初の長編小説。
エジプト、プトレマイオス朝のアレクサンドリア。
都市一番の美女と謳われる神聖娼婦クリュシスは、女王の愛人で「アポロンのように美しい」彫刻家デメトリオスと出会い…。
ギリシア神話を下敷きにした、愛とエロスの物語。
ジョルジュ・バルビエが美しい挿絵本を描いている(1954)。

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ピエール・ルイス『ビリティスの唄』

Pierre Louÿs, Les Chansons de Bilitis, 1894|沓掛良彦訳、水声社、2003

サッフォーと同時代(紀元前6世紀)の女流詩人ビリティスの詩を翻訳したもの、という体裁で出版された散文詩集。
知られざる詩人だったビリティスの墓が19世紀になって発見された経緯を本当らしく記した序文など、ルイスの筆があまりに巧みだったため、ビリティスという詩人が実在すると信じてしまった読者続出。
大真面目に論じて恥を書いた文芸評論家もいた。

それはともかく、バルビエの挿絵つき豪華本(1922)は必見である。

(バルビエは『ビリティスの唄』を3回=1910、1922、1929=手がけている。一般に知られているのは第2版。第3版は「秘密の歌」と呼ばれ25部だけ限定出版された)

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阿刀田高『獅子王アレクサンドロス』

講談社、1997(2000年文庫化)

紀元前4世紀、ギリシャからインドに及ぶ大帝国を築き上げたアレクサンドロス大王。
その波乱に満ちた生涯を描いた歴史小説。


阿刀田高『新トロイア物語』

講談社、1994(1997年文庫化)

絶世の美女にしてスパルタ王妃のヘレネと恋に落ちた、トロイア王子パリス。
駆け落ちした王妃を奪還するため、ギリシャとトロイアの戦争が始まった。


メアリ・ルノー『アレクサンドロスと少年バゴアス』

Mary Renault, The Persian Boy, 1972|堀たほ子訳、中央公論新社、2005

「アレクサンドロス三部作」のひとつ。
未曾有の世界帝国を築いた、マケドニアのアレクサンドロス大王。
アケメネス朝ペルシアのダレイオス王に愛され、のちにアレクサンドロスに仕えた美少年バゴアスの視点から、英雄の生きざまを描いた歴史ロマン。

古代ギリシャでは全く珍しくないことながら、アレクサンドロスはバイ・セクシャルだったようですね。
宦官バゴアスも実在の人物です。


歴史ミステリ

マーガレット・アン・ドゥーディ『哲人アリストテレスの殺人推理』

Margaret Doody, Aristotle Detective, 1978|左近司祥子訳、講談社、2005

アリストテレスを探偵役とする哲学ミステリー。
BC332年、アレクサンドロス大王支配下のアテナイで有力貴族ブータデスが殺された。
親ペルシャ派と目され前科によって追放中のフィレモンに疑いの目が向けられる。
リュケイオンに学んだステファノスは、不在のいとこの無罪を晴らすべくプロディカシア(予備審問)での弁論に立つために、師アリストテレスに援助を乞う。
アテナイの知性・哲学者アリストテレスが推理解明する事件の真実とは?

本作は「アリストテレス」シリーズの第1作。現在8作ほど出版されているが、他は未邦訳。
ちなみに、著者も訳者も大学に籍を置く研究者です。


柳広司『饗宴 ソクラテス最後の事件』

創元推理文庫、2007

ペロポネソス諸国との戦争をきっかけに、アテナイは衰微の暗雲に覆われつつあった。
そんななか、奇妙な事件が連続して発生する。
若き貴族が衆人環視下で不可解な死を遂げ、アクロポリスではばらばらに引きちぎられた異邦の青年の惨殺死体が発見されたのだ。
すべては謎の“ピュタゴラス教団”の仕業なのか?
哲人ソクラテスが、比類なき論理で異形の謎に挑む!
野心溢れる本格推理。


柳広司『パルテノン』

実業之日本社文庫、2010

ペルシャ戦争に勝利し映画を極めたアテナイを舞台としたミステリ、3篇を収録。

・「パルテノン」パルテノン神殿の設計者フェイディアスと、アテナイの最高指導者ペリクレス
・「巫女」デルポイの巫女アリストニケ
・「テミストクレス案」ペルシア軍を海戦で破ったテミストクレス


歴史ファンタジー

荒俣宏『幻想皇帝―アレクサンドロス戦記』

角川春樹事務所、1996-97、全3巻

戦国時代の日本。イエズス会の宣教師フロイスが織田信長に語る。
「西洋には二千年前、歴山大王(アレクサンドロス)という偉大な王がいました。その王は、信長様にとてもよく似ています」
フロイスの語りを通じて、アレクサンドロスの物語を綺想に満ちた筆致で描いた伝奇小説。

『アレクサンダー戦記』としてアニメ化もされています(1999)。


【補足】

・矢野龍渓「経国美談」明治16-17
・太宰治「走れメロス」昭和15
・ロバート・グレイブス「ホメロスの娘」Homer's Daughter, 1955.(未邦訳)

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