古代ローマを描いた小説|歴史小説
古代史ファンにすすめる!
「古代ローマ」を描いた歴史小説のブックリストです。
共和制→帝政 ユリウス・クラウディウス朝→五賢帝時代→セウェルス朝・軍人皇帝時代、とほぼ描かれている時代の時系列に並んでいます。
ミステリ・SF・児童文学は別途リストを作る予定。
古代ギリシャ篇はこちら。
歴史小説
【共和制】
ギュスターヴ・フローベール『サランボー』
Gustave Flaubert, Salammbô,1862|『サランボオ』神部孝訳、角川文庫、1954
第一次ポエニ戦争後の古代カルタゴを舞台に、巫女サランボーの運命を描く。
Project Gutenbergで全文読めます。
http://www.gutenberg.org/files/1290/1290-h/1290-h.htm
佐藤賢一『カエサルを撃て』
中公文庫、2004
ガリアの若き王ウェルキンゲトリクスと、ローマのカエサルとの対決の視点からガリア戦記を描いたもの。
パスカル・キニャール『アルブキウス』
Pascal Quignard, Albucius, 1990|高橋啓訳、青土社、1995
神なき時代の古代ローマで、美しく残酷な物語を書き続けた作家アルブキウスの生涯。
【帝政―ユリウス・クラウディウス朝】
クリストフ・ランスマイアー『ラスト・ワールド』
Christoph Ransmayr|高橋輝暁・高橋智恵子訳、中央公論社、1996
「変身物語」で名高い詩人オウィディウスは、黒海沿岸の流刑地トミスで果てた。その遺稿をもとめて「最果ての地」トミスへ旅立った男の奇譚。
ヘルマン・ブロッホ『ウェルギリウスの死』
Hermann Broch, Der Tod des Virgil, 1945|川村二郎訳、『20世紀の文学7』『新版 世界の文学13』、集英社
詩人ウェルギリウスの死の直前の18時間を描く。
こちらのページに邦訳あり。
ヘルマン・ブロッホ「ウェルギリウスの帰郷」
Hermann Broch, Die Heimkehr des Vergil|入野田真右訳、河出書房新社 モダン・クラシックス『知られざる偉大さ』1975
こちらのページ に邦訳あり。
ニコス・カザンザキス『キリスト 最後の誘惑』
Νίκος Καζαντζάκης, Ο τελευταίος πειρασμός, 1951|児玉操 訳『キリスト最後のこころみ』 恒文社、1982年
ニコス・カザンザキス『ふたたび十字架につけられるキリスト』
Νίκος Καζαντζάκης, Ο Χριστός ξανασταυρώνεται, 1948|児玉操 訳、新風舎、 2003
遠藤周作『死海のほとり』
新潮文庫、1983
エルサレムを訪れた小説家の「私」が描く、人間イエスの生涯。
エドガー・ライス・バロウズ『カリグラ帝の野蛮人』
Edgar Rice Burroughs, I am a Barbarian, 1967|創元推理、1982
ブリトン人の語り手が「息子に読ませるため」に書いたという体裁。カリグラ帝の捕虜となってから、帝が崩御するまでの一代記。
ロバート・グレーヴス『この私、クラウディウス』
Robert von Ranke Graves, I, Claudius, 1934|多田智満子・赤井敏夫訳、みすず書房
淫蕩な皇后メッサリーナの夫として知られる、皇帝クラウディウスによる自伝の形式をとった作品。
続編に『神、クラウディウスとその妻メッサリーナ』(Claudius the God and His Wife Messalina) があるが未邦訳。
ユーベル・モンティエ『ネロポリス』
Hubert Monteilhet, Néropolis: Roman des temps néroniens, 1984|羽林泰訳、中央公論社、1988
紀元一世紀半ば、ネロ帝の時代のローマ貴族やキリスト教徒たちを描く。
シェンキェーヴィチ『クオ・ワディス』
Henryk Sienkiewicz, Quo Vadis, 1895|木村彰一訳、岩波文庫、1995
ネロ帝の時代、ローマの軍人マルクス・ウィニキウスとキリスト教徒の娘リギアとの恋愛を軸に、迫害されたキリスト教徒たちの姿を描く。ポーランド人の作者が、帝政ロシアの圧政を受ける祖国への思いを仮託した作品。
エドワード・ブルワー=リットン『ポンペイ最後の日』
Edward Bulwer-Lytton, The Last Days of Pompeii, 1834|講談社青い鳥文庫、2001
西暦79年、ヴェスヴィオ火山の爆発により火山灰に埋もれて消滅したローマ帝国の町ポンペイ。娯楽色が強く勧善懲悪のストーリーを持った読み物。
ロバート・ハリス『ポンペイの四日間』
Robert Harris, Pompeii, 2003|菊池よしみ訳、ハヤカワNV、2005、
ヴェスヴィオ山が噴火し、都市ポンペイが壊滅するまでの四日間。
テオフィル・ゴーチェ『ポンペイ夜話』
Pierre Jules Théophile Gautier, Arria Marcella ou Souvenir de Pompèi, 1852|田辺貞之助訳、岩波文庫、2002
幻想短編。現代の青年がポンペイの博物館で古代の麗人に烈しく恋をし、噴火直前のポンペイで時空を超えて踊り子の魂が蘇る。
【帝政―五賢帝時代】
トルストイ『光あるうちに光の中を歩め』
Лев Николаевич Толстой, Ходите в свете покА есть свет, 1887|原久一郎訳、新潮文庫、2005
トラヤヌス時代のキリキヤを舞台に、二人の男のそれぞれに異なる求道遍歴の生涯を描く。
マルグリット・ユルスナール『ハドリアヌス帝の回想』
Marguerite Yourcenar, Mémoires d'Hadrien, 1951|多田智満子訳、白水社、2008
五賢帝のひとりハドリヌス帝の伝記小説。病床に伏した皇帝が、後継者マルクス・アウレリウスに宛てた書簡という体裁を取り、自らの人生を振り返る。
【帝政―セウェルス朝・軍人皇帝時代】
ノサック『ルキウス・エウリヌスの遺書』
Hans Erich Nossack, Das Testament des Lucius Eurinus, 1963|圓子修平訳、集英社『世界の文学 20』1977
赤羽堯『流砂伝説』
文藝春秋、1994
3世紀、シリア砂漠の中央に栄えた都市パルミラを治めるゼノビア女王が、ローマ帝国に挑む。
辻邦生『背教者ユリアヌス』
中公文庫、1974
キリスト教化するローマ帝国に、「異教」のギリシャ・ローマの神々を呼び戻そうとしたユリアヌス帝の生涯。
メレシュコフスキー『背教者ユリアヌス 神々の死』
Дмитрий Сергеевич Мережковский, 1894|米川正夫訳、河出書房新社、1986
ロシア象徴派詩人が描く背教者ユリアヌス。
パスカル・キニャール『アプロネニア・アウィティアの柘植の板』
Pascal Quignard, Les Tablettes de buis d'Apronenia Avitia, 1984|高橋啓訳、青土社、2000
西暦4世紀ローマの貴婦人が記した随筆集、という体裁。発表当時、実在のラテン語古典籍の翻訳だと信じた読者もいた。
チャールス・キングスレー『ヒュパティア』
Charles Kingsley, Hypatia, 1853|村山勇三訳『ハイペシア』春秋社、1924
ローマ帝国末期の都市アレクサンドリアを舞台に、実在の天文学者ヒュパティアの悲劇を描く。
上下巻ある長篇ながら、Webで全邦訳(しかも独自の)を公開されている方がいます。
おまけ:ヒュパティアの半生を映画化した「アレクサンドリア」(2009)
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