古代ギリシャ女子会に行ってきた
ギリシャの経済危機が世界を騒がせている真っ只中ですが、先週末の6/28(土)、東京大学で古代ギリシャ関連の公開講座・野外劇上演イベントが行われました。
その後、研究家の藤村シシンさんを中心に有志で集まり、本郷の喫茶店で古代ギリシャについてなんと6時間(!)、熱く濃密に語り合いました。
ああ、これは部分的にでも書き残しておかねば……と感じたため、本エントリはその時の断片的記録です。
【目次】
みんな、古代ギリシャ好き過ぎないか?/本郷で古代ギリシャトーク/完全再現! 野外供儀@東京ドーム/パルテノン神殿 極彩色プロジェクション・マッピング/断食月ギリシャ・グルメツアー
みんな、古代ギリシャ好き過ぎないか?
葛西康徳教授の「古代ギリシア教に改宗することはできるか?」という、何やら刺激的なタイトルの公開講座(東京大学文学部)。実を言うと、内容以前に驚いたことがいろいろあります。
まず、このタイトルに秘儀感ありすぎ。か、改宗、ですって?! わたし仏教徒なんですけど、一体何をされちゃうの? おそらく会場の教室では火が焚かれ、犠牲の牛を神に捧げ、「この場にいる者は誰か?」「善良なる市民!!」と斉唱したりするんだろうな……などと想像してしまいました。
そして当日、会場は大教室ながら満員、立ち見が出るほどの盛況ぶり。客層は老若男女バランスよく揃っていたので、お年寄りが無料のカルチャーセンター代わりに来ているとか、刀剣女子ならぬ「古代ギリシャ女子」が殺到……というわけでもなさそうです。次々と増えていく来場者を眺めながら「みんな、ちょっと古代ギリシャ好き過ぎないか?」と、思わずつぶやきました。そういうお前も、なんですけど。
ヨーロッパではむしろ、古典語教育の時間がどんどん削減傾向にあるというのに、アジアの島国で謎の古代ギリシャ熱が起こっている現象は、世界的に見ても興味深いんじゃないでしょうか。
本郷で古代ギリシャトーク
講義終了後、有志6名で近くの喫茶店ルオーへ入り、お茶をしながら古代ギリシャについて語り合うことにしました。
参加者は、専門家である藤村シシンさんと星彦さん、ギリシャ在住のHさん、占い師のNさん、天文がご趣味で絵師のMさん(あと私)です。ほとんど全員が初対面でしたが、共通点はギリシャ愛!
最初に店に入ったのが16時ちょっと前、ルオーが土曜日17時閉店のため、駅前のドトールへ移動して閉店の22時まで。つまり、気づけば6時間超トークしていたという……!
あ、ちなみに「古代ギリシャ女子会」という名称を勝手につけたのは私で、最初は漠然と「お茶会」って言ってたんですが、お茶会ってふつう店2軒ハシゴして6時間もやらないよな……と思いまして。
それでは、前置きが長くなりましたが、以下のまとめをご覧ください。四方山話の中からブレイン・ストーミングのように飛び交った、「こんな古代ギリシャを体験したい!」のアイデア集です。
完全再現! 野外供儀@東京ドーム
先月5/23にお台場のTOKYO CULTURE CULTUREで行われた「古代ギリシャナイト」、善良な市民の皆様はご存知の通り、冒頭の祭儀は壮絶なものでしたね。犠牲の白牛が縄で曳かれ、会場を引きずり回された挙句、断末魔の叫びを上げながら頸動脈かっ切られ! 辺り一面血の海になるわ、内臓飛び散るわ! すかさずその場で火を焚き、牛を丸焼きに。もうもうたる煙と獣脂の臭いで会場はもう凄いことに――はならなかったんですよね。「消防法」という名の壁により……。
そこで、次はいっそ東京ドームあたりを借り切って「完全再現! 野外供儀」とかどうでしょう?(by 星彦さん)というお話に。
シシンさん 「東京ドーム? すげー!! 東京ドームいいですね、屋根ないから焼き放題だし、芝生とか牛の血ガンガン吸収してくれそうな感じだし!」
Mさん 「東京ドームで牛焼くのって、消防法的にはセーフなんですか?」
坂本 「よく分からないですけど、たぶんアウトかと…」
シシンさん 「どっかないかなあ、消防法的に大丈夫な場所」
Hさん 「牧場を一日借りてしまうとか……」
星彦さん 「キャンプ場とか、バーベキュー場貸し切った方が早くないですか?」
全員 「「「「「それだ!!!」」」」」
というわけで、来年のアポロン神のお誕生日会は、ひょっとしてBBQパーティになる可能性があるかもしれません。なお、シシンさんによればアポロンの君は脂の乗ったお肉がお好みではないので、最高級の松坂牛を用意しなくてもいいそうです。
(これは公開講座で葛西先生も仰ってましたね、古代ギリシャの供儀では神様に骨を捧げ、肉は人間が食べるのだと)
パルテノン神殿 極彩色プロジェクション・マッピング
今では真っ白な大理石のパルテノン神殿ですが、当時は鮮やかな色彩に着色されていたことが、文化財科学調査によって判明しています(復元想像図)。ただそうは言っても、さすがに今から神殿をこういう色に塗り直す、という修復は現実的に不可能ですよね。そこで、夜間限定で極彩色プロジェクション・マッピングしてはどうか、と……。
Hさん 「でも、現地のギリシャ人で夜中に働いてくれる人が集まるかどうか?」
(※注:公務員の多いギリシャですが、役所などは午後2時に閉まるそうです。あまり日本人のように長時間労働しません)
シシンさん 「だったら、日本から人員を送り込めば!」
Hさん 「下から照明を当てるだけの普通のライトアップだったら、既にやってますけどねー」
Mさん 「パルテノン神殿って、真っ白だっていうイメージがあるから、派手な色を受け入れるのなかなか大変かも」
坂本 「慣れましょう。私らはもう無理かもしれないけど、下の世代には慣れてもらいましょう。子供の教育用にぬり絵つくって、『パルテノンしんでんをキミ色にそめよう!』みたいな」
ちなみに後で調べてみたら、米国テネシー州ナッシュビル市にある、パルテノンの原寸大レプリカ神殿では極彩色ライトアップが試みられているようですね。古代色の再現、という文脈とは関係ないみたいだけど。ギリシャの本家も、一度やってみませんか? 今は経済危機でそれどころではないでしょうが……。
断食月ギリシャ・グルメツアー
ギリシャにお住まいのHさんからは、衣食住・仕事・子供の教育など、日常生活について在住者ならではの興味深いお話を伺いました。
特に面白かったのが、ギリシャ正教の断食月です。詳しくはこのページあたりを見て頂きたいのですが、簡単に言えばイースター(復活祭)前などの一定期間、肉や乳製品などの食事制限をする宗教的習慣です。(イスラム教のように日中の飲食を禁じるわけではありません)
シシンさん 「私、断食月にギリシャ行ったとき、正直あんまりみんな厳格に守ってないな、って印象を受けたんですけど……」
Hさん 「あ、断食は最初の方って割とゆるいんですけど、期間中にだんだんエスカレートしていくんです」
ALL 「「「エスカレート」」」
Hさん 「最後の方とか結構厳しくなりますよー。レストラン行くと断食メニューあるし、お店にも断食フード売ってます。断食ケーキとか」
シシンさん 「断食ケーキ……! 何その、名称からして思いっきり矛盾してる存在……!!」
Nさん 「でも断食ケーキ、おいしそう」
シシンさん 「断食ラーメンとかも食べてみたいな~」
坂本 「え、断食ラーメン?! そんなのあるんですか??」
シシンさん 「いえいえ、ないと思います(笑) 断食月のギリシャ、今度はマックスにエスカレートしてる最後の方に行ってみたい!!」
欲しいよ、断食ラーメン……。ラー油の代わりにオリーブオイル入ってるのかな。ダイエット中にムシャムシャ食べてみたいよ……(←なんか本来と全く違う趣旨の食べ物になっている)。
そのほか、
・エペイロス(≒ドドナ)は古代ギリシャ人にとっての「古代ギリシャ」
・満月の夜なら停電なんて怖くない!
・ギリシャは乾燥しすぎ、日本は湿気多すぎ
・成田空港へ着くと空気中に水の分子が見える!
・普段いかに、東京の水と空気に甘やかされて生きているか!
などなど、飛び出した名言は数知れず。
いやー本当に楽しゅうございました。
ご参加の皆さま、どうもありがとうございました。
そして古代ギリシャファンの皆さま、今度はぜひ別のお茶会で語り合いましょう!
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