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2015年5月10日 (日)

谷崎潤一郎 美味礼讃フルコース

本日、中央公論新社より、新装版『谷崎潤一郎全集』が刊行されました。

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谷崎全集はこれまで中公から3度刊行されていますが、今回初めて新漢字(旧かな)を採用、未収の創作ノートなど新資料が含まれ、新たな決定版となりそうです。
装幀ミルキィ・イソベ、装画山本タカトという耽美で妖しい造本も魅力。箱背表紙のモチーフは巻ごとに変わるという贅沢さ! 第1巻は「刺青」にちなんで女郎蜘蛛です。

(ちなみに、昭和56年の旧版はこんな感じでした。うちにあるボロボロの↓)

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さて、刊行記念ということで、谷崎イヤーを盛り上げたいというファンの気持ちから、今夜ひとりで勝手に谷崎祭りをやることにしました!
題して「谷崎潤一郎 美味礼讃フルコース」。
「細雪」「卍」など、谷崎作品をイメージした料理を前菜からデザートまで作ってみる、という食い意地の張った企画です。

谷崎の美食小説と言えば「美食倶楽部」。そして、実生活の食通ぶりは渡辺たをり『花は桜、魚は鯛』に詳しい。が、谷崎が通ってたような高級料亭に太刀打ちできるわけないので、「普通の主婦(夫)がちょっと頑張れば作れる谷崎的グルメ」が今回のコンセプトです。

おしながきはこちら↓

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それでは、写真つきで紹介していきましょう!

§食前酒 アメール・ピコン

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谷崎がお気に入りだったピコン。アルジェリアの薬草をヒントに作られ、フランスで1837年発売された薬草系リキュール。ほろ苦いオレンジ風味が特徴です。

当時はなぜかピコンに媚薬効果があると信じられており、谷崎もそのつもりで二番目の妻・丁未子と共に愛好していた模様。

「能率の上がらないのは決してぴこんのためにあらず」
「丁未子ハ『ピコン』以外に何の仕事もなく退窟の体」
 (谷崎から妹尾宛書簡、昭和6年)

ここでの「ピコン」はもちろん隠語ね。先生、何やってるんですか……。

§「細雪」風 四姉妹の前菜

 鶴|干しいちじくと黒胡麻豆腐
 幸|テリーヌとパイナップルの冷製酢豚
 雪|白桃の生ハム包み
 妙|桜海老、マスカルポーネ、アボカドのムース

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「細雪」の美しき四姉妹から連想した前菜四種。いずれも果物を使っています。

「鶴」は、干しいちじくに黒胡麻豆腐を合わせ麹味噌たれで。
「幸」は、テリーヌを使った変わり種の冷製酢豚。幸子のモデルとなった谷崎の妻松子→松→パイン→酢豚、という連想です。
「雪」は、ミステリアスな三女雪子をイメージした、白桃の生ハム包み。レモンと黒胡椒の隠し味。
「妙」は、桜海老、マスカルポーネ、アボカドのムース。末娘のいとさんらしく、みずみずしい色づかいと食感を意識しました。

【ちょっと一言】
テリーヌは、代官山のターブル・オギノがお勧めです。ハム、パテ、テリーヌなどの肉加工品のことを「シャルキュトリー」(Charcuterie)と総称するのですが、オーナーシェフの荻野伸也さんは、日本におけるシャルキュトリーの専門家で五本の指に入る方ではないでしょうか。『シャルキュトリー教本』という本格料理本もあり。すごい本です。

§「卍」風 蛤のスープ

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卍の百合世界をイメージした蛤のスープです。(きゃっ…)
蛤はおすましにするのが普通ですが、水草じゅんさいを入れてぬめとろ感たっぷりに。(あらやだ…)
隅っこの茸ですか? これはとってもご立派な大黒本しめじ。(ほら、ヒロインには一応夫がいて光子と三角関係になるから、的な)

奥様ご覧になって! 大黒本しめじって、こーんなにおっきくってカワイイきのこなんですのよ!

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…もう、あからさまに色々とやばいスウプ。ひとひら浮かべた柚子だけが、かろうじて爽やかな風味をもたらします。

§「陰影礼賛」風 和野菜のサラダ

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谷崎って肉食系なのでサラダは無くてもいいかなと思ったんですが(笑)、野菜がないと辛いので入れました。「陰翳礼讃」と言えば日本美。水菜、蕪、紅しょうが、黒豆などの和野菜を屏風絵のように盛り付け、山葵醤油のドレッシングで。

§「春琴抄」風 蒸し鶏の絢爛ソース

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美しく気性の激しい春琴をイメージして。広東式の蒸し鶏と、北米ターキー料理のクランベリーソースを掛け合わせました。上の写真はちょっとブレましたが、一番エロティックな角度から撮ったつもり。

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なお、クランベリーソースをじっくりコトコト煮込み中の写真がこちら。
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§「人魚の嘆き」風 鯛のポワレ、キャビア添え

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和風ビアズリーと称される水島爾保布の耽美挿絵で有名な、「人魚の嘆き」をモチーフに。黒キャビアを泡と涙に見立てています。東洋感のある、黄色いサフランソースで。

§パン/ご飯

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これは特に由来とかないです。淡々と、パン、ご飯です。各自好きな方を取ること。

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§「痴人の愛」風 お茶菓子

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食後のお茶とお菓子は「痴人の愛」風! 最後まで自重しないのが谷崎クオリティ!! 珈琲・紅茶と一緒に、「バーチ・ディ・ダーマ」と「ヴィーナスの乳房」を。

Baci
バーチ・ディ・ダーマ(Baci di Dama)は、イタリア語で「貴婦人の口づけ」。ピエモンテ地方の伝統菓子です。なおこれは手作りではなく、C3(シーキューブ)のサクッチ・ホロッチを買ってきたもの。

Venere
ヴィーナスの乳房(Capezzoli di Venere)は、映画「アマデウス」でもおなじみ(サリエリがモーツァルトの妻に勧めていたお菓子)。本来はマロン・グラッセの砂糖がけですが、KIHACHIのポルボローネに苺ジャムを乗せてみました。

……谷崎先生って、こういうのすごく好きそうじゃない? バーチ・ディ・ダーマも名前だけで昂奮しながら夢中で貪りそう。

ちなみに、映画『紅閨夢』(武智鉄二、1964)では、芝山千之丞演ずる谷崎が、常に舌なめずりしながら美味しいものを食べまくる(そして最後にはお腹を壊す)品のない映像をたっぷり堪能できます。
「過酸化マンガン水の夢」「柳湯の事件」を脚色・映像化したものですが、谷崎本人は怒って「あんな下らないものは観ません」と公言してたらしい。(観てないのになぜ「下らない」と分かるのか謎ですよね…)

以上で「谷崎潤一郎 美味礼讃フルコース」はおしまいです!

品数が多いのでレシピは省略しましたが、もし知りたい料理などありましたら、遠慮なくコメント欄(もしくはTwitter)でご質問どうぞ。

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