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2014年3月12日 (水)

谷崎潤一郎の愛した美猫(1)

猫好きで知られる、文豪・谷崎潤一郎。
生涯に飼った猫は、数十匹にものぼるとされています。
その中でも、谷崎がとりわけ愛した美猫たちを取り上げます。
今回は、シャム猫のタイです。

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谷崎と愛猫「タイ」昭和12年頃 撮影:渡辺義雄

阪神の反高林(たんたかばやし)の邸宅、「倚松庵(いしょうあん)」で飼っていました。性別は不明ですが、雄よりも雌猫を溺愛した谷崎のことですから、タイちゃんも女の子だったと仮定しておきましょう。
可愛がられていた彼女(仮)ですが、フグの干物を食べて、あえなく中毒死。猫にそんなものやっちゃ駄目ですよ、と獣医からたしなめられたという逸話が、随筆「当世鹿もどき」に記されています。

『作家の猫』(平凡社、2006年)によれば、タイは享年2歳であり、上の写真は昭和12(1937)年頃のもの。また、谷崎が反高林に転居したのは昭和11年11月のことですから、タイが谷崎家にいた期間は、だいたい昭和11年~昭和13年頃だろうと推定されます。

なお、昭和11年1月30日付の、和気律次郎宛書簡によれば、「東京で家畜研究の雑誌を発行している駒城という獣医から写真と手紙来て、シャム猫値段三百五十円とのこと、奥村さんに勧めたらどうか、意向を聞いてくれ」という旨が記されています。(谷崎潤一郎詳細年譜)
「奥村さん」というのは、大阪毎日新聞の奥村信太郎のことで、大の動物好き、猫好きの人。ひょっとして、この文中のシャム猫がタイで、結果的に奥村ではなく谷崎が引き取った、という流れかもしれません。推測に過ぎませんが、時期的にはうまく辻褄が合います。

また、「値段三百五十円」ですが、これは現代の貨幣価値に換算すると、いくらぐらいなのでしょうか? 当時の米10kgの値段が約2円50銭なので、今の物価はその1500倍とすると、52万円ほどに相当します。まあ、決して安くはありませんが、庶民には高嶺の花、と言うほど高価でもありませんね(やや意外)。

それにしても、タイちゃん、ミステリアスな雰囲気の美猫です。
一抹のあどけなさを残したファム・ファタル、といった風貌で、谷崎にはぴったりじゃないですか。
で、ここから先は、完全にわたくしの妄想ですが……。

――谷崎先生、駒城獣医師からの写真を見て、きっとタイちゃんに一目惚れしちゃったんですよ。でも、谷崎家は借金だらけだし、松子夫人への遠慮とか、色々あって断念。仕方がないので、友人の奥村氏に斡旋することにした。が、実際のタイちゃんを見てみると、写真より断然コケティッシュ! ああ、斡旋なんかしないで、引き取っておけばよかった。悶々と後悔の日々を送る、潤一郎。そんな彼の前に、ある日ふと姿を現したのは……。

松子 「あんた、その猫、奥村さんに返したげなさい」
潤一郎 「なんでやねん?」
タイ 「ニャア~ (訳:おやつちょうだい)」
松子 「なんでって、それ奥村さんとこから、逃げ出してきたんやろ。明日、北畑行って、早よ返してしまいなさい」
タイ 「ミャーオ~ (ねえ、パパさんってば、おやつ~。村上開新堂のケーキがいい)」
潤一郎 「お、ちょっと待ち」
松子 「あんた、わての話聞いてんの!」
潤一郎 「すんまへん……」
松子 「潤さん。あんた、わてより猫が大事やねんなあ」
潤一郎 「ま、ようそんなこと……。阿呆らしなって来るわ、ほんまに」
松子 「そんなら、この猫遣ってしまいなはれ」
潤一郎 「なあ、頼むさかいに、そない言わんと……」
タイ 「フガッ! (もういい! おやつくれないんなら、あっちのパパさんの家に戻っちゃうもん)」
潤一郎 「あかん、それだけはあかん! 僕もう、なんでもタイちゃんの言うこと聞きますよってに、どうか堪忍してぇな」

……えーと、谷崎先生、ごめんなさい。あと、適当な関西弁ですみません。『猫と庄造と二人のおんな』と、『痴人の愛』と、わたくしの妄想をごた混ぜにしたら、こうなりました。

次回は、もう少しマシな内容(タイの猫種に関する、結構細かい考察)を書く予定ですので、どうかお許し下さいませ。

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